交通事故の被害に遭ったときに、慰謝料や損害賠償金を算定する上で重要になるのが「過失割合」です。ただ、過失割合を保険会社から突然伝えられても、その割合が適正なものであるのか判断できず、悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
ここでは、交通事故の被害に遭ってしまった人に向けて、過失割合は誰が決めるか、また過失相殺や交通事故証明書などの知識について解説します。
1. 過失割合とは
そもそも、交通事故における過失割合とはどのようなものなのでしょうか。過失割合とは、被害者・加害者それぞれにおける交通事故の結果に対する「責任の割合」を指します。
交通事故が起きたとき、一般的に被害者は加害者に対して、損害賠償請求を行うことができます。
しかし、交通事故にはさまざまなケースがあるため、加害者側だけにすべての損害を負担させるのは適切ではない可能性もあるのです。こうしたときに、公平の見地から加害者側の賠償額を減額するために過失割合があるといわれています。
2. 過失相殺による損害賠償金額の算定
2.-(1) 過失相殺とは
過失割合に深く関連するもののとして「過失相殺」が挙げられます。過失相殺とは、自分の過失割合を相手に請求する賠償金額から減らすことです。
交通事故が起きたとき、被害者・加害者のどちらかの一方的な責任になることは少なく、どちらにも過失が認められるケースが多くみられます。交通事故の被害に遭った側からは納得できないこともありますが、現実には被害者も交通事故の原因があるとされる場合があるのです。
すると、交通事故が起きたことに対する過失の割合を被害者・加害者のそれぞれで決める必要が生じるのです。例えば、被害者が2割、加害者が8割などとして、過失割合を決定します。
過失割合は被害者・加害者それぞれの交通事故に対する責任割合です。これに対し、過失相殺は過失割合を使って具体的に損害賠償の金額を計算する方法です。
例えば、交通事故の被害にあったことによりあなたに生じた損害総額が200万円だとして、過失割合があなたと加害者で2:8だとすると、加害者に損害賠償を求めることができるのは160万円に限られるのです。
2.-(2) 損害賠償額が過失割合により減少する
交通事故の被害によって生じた損害があるとしても、交通事故の被害者も一定の割合で責任を負うべき場合は、加害者が損害を全額負担する理由はありません。したがって、加害者が負担すべき損害額は加害者の過失割合分に限定されるのです。
このように過失割合によって、請求できる損害額を限定することを過失相殺といい、過失相殺により被害者と加害者の間で交通事故により生じた損害の分担処理を行います。
すなわち交通事故の被害者に過失割合が認められたとき、加害者にとっては損害賠償すべき金額が減少します。これに対し、被害者側にとっては、すべての被害額を相手に保証してもらうことが難しくなるため不利になってしまいます。
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3. 過失割合は誰が決めるの?
交通事故において重要なポイントである過失割合は、誰が決めるか気になる人もいるでしょう。被害者・加害者の双方に過失がある交通事故の場合は、まずは協議によって過失割合を決めるのが一般的です。
3.-(1) 裁判例を基準とした過失割合の決定
そして、協議を行うときは「過去の裁判例」を基準として過失割合を決めます。起きてしまった交通事故と、過去に起きた類似している裁判例を照らし合わせ、状況に応じて割合を修正しつつ過失割合を決めていきます。
しかし、過去の裁判例が基準となると言っても、どのケースが類似しているのかや当該ケースからの修正要素が争われることもあります。過失割合が10%違えば獲得できる慰謝料金額や示談金が大きく変わるため激しく争われるケースも少なくありません。
裁判例を基準とした協議によって過失割合が決められない場合には、最終的には裁判を提起して裁判所で過失割合を決定して貰うことになります。
3.-(2) 警察がいう過失割合には注意
なお、過失割合を決めるのは民事上の問題となります。したがって、過失割合の決定に警察が介入することはないのです。警察は現場の確認や当事者からの状況確認などを行い、交通事故の事実を記録します。
そして、この事実を記録した実況見分調書や事故の状況を考慮し、当事者や保険会社が話し合いをして、合意するのが一般的な流れです。
しかし、交通事故の直後に警察と話していると、今回の事故は過失割合が2:8ですねなどと警察がいうことがあるようです。
交通事故の被害にあった方のご相談で「警察が過失割合を教えてくれた」と仰る方がいますが、警察は過失割合についての知識は全くありません。警察が過失割合について話すときは、何となくの雰囲気で言っていることも多いので注意しましょう。
4. 過失割合に納得できない場合はどうすればいい?
4.-(1) 保険会社が主張する過失割合に納得できない理由
過失割合を決めるときにトラブルに発展しやすいのが「過失割合に納得できない」というケースです。保険会社に交渉をすべて任せている場合、決定した過失割合に納得がいかないというトラブルが起きる可能性があります。
基本的に、保険会社は過去の判例を基準として過失割合を判断していますが、法律に精通したプロフェッショナルではありません。また、加害者側の保険会社は、支払う保険金を減らすために被害者の過失割合を大きく主張することもあります。
従って、どうしても事案ごとの事情をくみ取り、適切に過失割合を判断をするのが難しい場合があるのです。マニュアル通りの対応しかできない保険会社の場合、ときには適切ではない過失割合になってしまうおそれがあるため、注意が必要です。
万が一、保険会社が提示した過失割合に納得できない場合は、以下のような対処法があります。
4.-(2) 自分で過失割合の判断基準を調べる
まず、対処法として挙げられるのは、自分で「適切な過失割合を調べる」ことです。保険会社によっては、交通事故の被害者が知識がないことにつけ込み、高い過失割合を提示してくるケースもみられます。このような高い過失割合に合意しないためにも、過去の判例などを参考にして、自ら適切な過失割合を知っておくのが肝心です。
正しい知識をきちんと身に付けておくことで、保険会社が提示している過失割合が不当なものであるかどうかを判断しやすくなります。もしも、過失割合が不当である場合は、そのことを伝えて修正を求めると良いでしょう。
4.-(3) 事故状況の確認を行う
次に、「事故状況の確認をしてみる」のも有効な対処法です。過失割合は、交通事故の類型ごとに裁判例の蓄積がありますが、そもそも事故状況自体に争いがあることも少なくありません。
信号の色や衝突の状況など、交通事故の状況を細かく整理してみると、過失割合を決めるうえで役立つ情報が見つかる可能性があります。例えば、ドライブレコーダーを搭載している車での事故の場合は、その映像が重要な情報源となります。ドライブレコーダーの内容をしっかりとチェックし、状況を整理してみると良いでしょう。
最近はドライブレコーダーが普及していますが、ドライブレコーダーがない事故などでは事故状況が争われるケースが比較的多いです。
4.-(4) 交通事故に強い弁護士に無料相談
それから、交通事故に強い弁護士に無料相談することも対処法の一つです。自分で過失割合について調べるのが難しかったり、なかなか時間がなかったりする人もいるでしょう。このような場合は、弁護士に無料相談をしてみるのも一案です。
弁護士は法律に精通しているプロであり、過失割合の認定基準についてしっかりと把握しています。知識がないまま自分で対処しようとすると、どうしてもトラブルが起こりがちです。一方、交通事故に強い弁護士なら、豊富な経験と知識をもとに、適切な判断をしてくれます。
弁護士に依頼をすれば有利な条件を勝ち取れるように実況見分調書の取得手続きや、事故現場の状況確認などを行ってくれることもあります。また、過去の判例について調べ、有利な材料がないか探してくれる場合もあるでしょう。
このように、弁護士に依頼すると自分ではなかなかできないさまざまな手続きや交渉を経て、納得のいく過失割合の修正を期待できるのです。
自分で過失割合の修正を要求する場合、なかなか交渉がうまくいかないケースもみられます。このようなときにも、弁護士なら交渉スキルに長けているため、安心して任せられます。
豊富な知識を有しているため、不当に高い過失割合を押しつけられてしまう心配もありません。このように、弁護士に相談をするメリットは多くあります。過失割合に疑問を持っているものの、自分の知識だけで対処するのは不安だという場合は、弁護士を頼ってみると良いでしょう。
5. 交通事故証明書に過失割合の記載はある?
交通事故の被害に遭ってしまった後、保険会社に保険金や損害賠償を請求するケースは多くみられます。請求にあたり、必要となるのが「交通事故証明書」です。
交通事故証明書とは、交通事故が起きたという事実を証明するための書類です。事故が起きた後に警察に届出をすると、その届出をもとに、各都道府県にある交通安全運転センターが発行します。
なお、交通事故証明書は保険会社が取得を行うのが一般的です。自身で取得する場合は、郵送・インターネット・自動車安全運転センターの窓口などで申請手続きが行えます。交通事故証明書には「事故発生の日時」「事故が発生した場所」「当事者の氏名」などが記載されています。
しかし、交通事故証明書には過失割合についての記載はないため、注意しましょう。
交通事故証明書は警察が作成する書類ですが、前述の通り過失割合は民事上の問題であり、警察は詳しくありません。
警察が過失割合について説明をしたとしても、交通事故証明書などには一切記載されませんので注意が必要です。
(参考)交通事故証明書とは。取得方法やチェックポイントを解説!
6. まとめ:交通事故の過失割合は慎重に判断する
過失割合は軽い気持ちで合意してしまうと、後から不満が出ても、うことが難しくなってしまいます。安易に合意を決めてから「しまった」と後悔しないためにも、過失割合について充分に知識を深めておくのが大切です。知識不足が心配だったり提示された過失割合に不満があったりする場合は、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。