1. 後遺障害慰謝料とは
交通事故の被害にあってしまい、今後どうなるのだろうか、慰謝料はどれぐらい貰えるのかと不安になられるかもしれません。後遺障害慰謝料や症状固定、逸失利益など初めて聞く言葉に頭が混乱されるかもしれません。
少し交通事故被害で貰えるお金について調べると後遺障害慰謝料という言葉にぶつかります。この記事では、後遺障害慰謝料とは何か、逸失利益やその他に貰えるお金とは何が違うのか等を弁護士が分かりやすく解説します。
1.-(1) 後遺障害慰謝料の定義
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級の認定を受けた場合に貰える慰謝料です。
…このように聞くと難しいと思われるかもしれません!笑
ここでは、後遺障害慰謝料は、「後遺障害等級」という認定を受けた場合に貰えること、少なくとも110万円、高額だと3000万円にもなる高額な慰謝料だということを押さえてください!
1.-(2) 後遺障害慰謝料を貰うためには?
後遺障害慰謝料を貰うためには後遺障害等級の認定を受ける必要があります。この点について、交通事故の被害にあってからの流れに応じて詳しく解説します。
交通事故の被害にあって、けがを負うと治療が始まります。最初は入院したり、病院に頻繁に通う必要がありますが、治療によって、けががどんどん治っていきます。しかし、現代の医療水準では完全に全ての症状を治せるわけではありません。これ以上治療しても、症状が改善しない状態になります(これを症状固定といいます。)。
要するに症状固定になると治療ができない症状が残ってしまうのですが、これを「後遺症」と言います。後遺症と言っても、ひざ頭に薄く傷が残ってしまう程度から、一生寝たきりになってしまう深刻なものまで様々です。
そこで一定以上の後遺症については、後遺症の軽重に応じて等級が設定されています。あなたの後遺症がどの等級に該当するかの認定を受けるのが後遺障害等級の認定です。
1.-(3) 後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、これ以上治療しても改善しない症状固定になり後遺症が残ってしまったときに、あなたの後遺症が後遺障害等級の認定を受けられた場合に、後遺障害等級のランクに応じて貰える慰謝料を言います。
後遺症が残っても軽度と判断されて後遺障害等級の認定を受けられない場合は後遺障害慰謝料は貰えません。上述の通り、後遺障害慰謝料が貰える場合は少なくとも110万円以上が適正金額であることからすれば、後遺障害慰謝料が貰えないか又は後遺障害慰謝料が貰えるかで大きく貰えるお金が変わってしまうことが分かっていただけるかと思います。
交通事故被害者の法律相談は0円!完全無料です。弁護士直通の無料相談や電話会議システムを利用したWEB面談も実施。法律相談は24時間365日受け付けておりますので、今すぐお問合せください。
2. 後遺障害慰謝料と区別されるもの
交通事故の被害に遭った場合に貰えるお金として、後遺障害慰謝料以外に様々なものがあります。ここでは後遺障害慰謝料と似ているけど違うものを説明します。
2.-(1) 入通院慰謝料
交通事故の被害にあって貰える慰謝料は2種類あり、後遺障害慰謝料と入通院慰謝料です。このうち入通院慰謝料は、治療のために入院や通院をせざるを得なくなった精神的苦痛のために貰えるものです。人身事故の被害にあった場合は少なからず治療が生じるはずなので、入通院慰謝料はほとんどの場合で貰えます。これに対し、後遺障害慰謝料は治療が終了した段階で後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けられた場合にのみ貰える点が異なります。
2.-(2) 休業損害
休業損害は、けがの治療をするため入院や通院の必要があり、そのため仕事ができなかっために生じた損害を貰えるものです。休業損害も入通院慰謝料と同じく、けがの治療中=症状固定の前の期間について貰えるものが異なります。
2.-(3) 逸失利益
後遺障害慰謝料と並んで重要なのが逸失利益です。後遺障害等級の認定を受ける程の後遺症が残ってしまうと、多かれ少なかれ働く能力が低下してしまいます。オフィスワーク等で現実には年収が低下しない場合であっても、働く能力が低下したため収入が減少したと考えて請求できるのが逸失利益です。
逸失利益は、後遺障害慰謝料と同じく後遺障害等級の認定を受けた場合に貰えるお金ですが、現在の年収に基づいてどの程度働く能力が低下したと考えたかで計算されるものです。後遺障害慰謝料は誰であっても同じ基準ですが、逸失利益は、年収が高い人ほど高くなる点が異なります。参考までに、年収500万円の人であれば、少なくとも約108万円は逸失利益が貰えることになります。
2.-(4) 将来の治療費
なお、一般的に症状固定後は後遺障害慰謝料・逸失利益が問題となり、治療費は症状固定までのものが請求できると言われることがあります。
しかし、一定の場合には将来の治療費が請求できることもあります。
例えば、植物状態で生命維持のために治療費が必要なとき、症状悪化を防止するために必要なとき、症状固定後の身体的苦痛を緩和・軽減するために必要なときなどです。
将来治療費の損害賠償請求は少しマイナーな論点ではありますが、症状固定後も治療費が請求できる場合があることは後遺障害慰謝料と区別して認識しておくことが有益です。
3. 後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の相場は明確に定まっており、後遺障害等級×算定基準で計算することができます。
3.-(1) 後遺障害等級
後遺障害等級は1級から14級まで定められており、最も重い後遺障害等級が1級です。
最も重い後遺障害等級1級は、例えば寝たきりで常に介護が必要なときや、両目が失明したような場合が該当します。
他方で、後遺障害等級14級は主に交通事故の被害にあってむちうち症になったときに症状固定を迎えても痛みがのこるようなときに問題になります。
後遺障害等級は損害保険料率算出機構という第三者機関が認定をします。
しかし、交通事故被害者がきちんと後遺障害に関する資料を提出し、適切な後遺障害等級を受けられないと大きな損をしてしまいます。
例えば、後遺障害等級を受けられるか後遺障害等級14級になるかによって、年収にもよりますが約200万円程度の示談金に差が生じることがあります。
後遺障害等級が1級違うだけで後遺障害慰謝料の相場が大きく変わるため、適切な後遺障害等級の認定を受ける必要があることは注意しましょう。
3.-(2) 3つの算定基準
後遺障害慰謝料を計算するときは、どのような算定基準で計算されるかも重要です。後遺障害慰謝料の算定基準としては、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)があります。
自賠責基準とは、交通事故被害者が最低限救済されるように強制的に加入させられる自賠責保険に基づく算定基準です。自賠責基準は、最低限の補償が趣旨であるため、3つの算定基準では最も低い金額となります。
任意保険基準は、交通事故の加害者が加入している任意保険ごとに定めた損害賠償の基準です。保険会社が最初に提示してくるのはこの任意保険基準で算定された後遺障害慰謝料の金額となります。
しかし、任意保険基準は自賠責基準と同じか少し上乗せされた程度にすぎません。適切な後遺障害慰謝料の金額とは程遠いので注意が必要です。
弁護士基準(裁判基準)は、弁護士が保険会社との交渉時に用いたり、又は裁判になったときの算定方法であり、適切な後遺障害慰謝料の相場としての金額です。
自賠責保険基準・任意保険基準と比べて弁護士基準(裁判基準)の方が後遺障害慰謝料は高額になりますが、弁護士が示談交渉をするか又は裁判を起こす必要がある点がポイントです。
任意保険基準については各保険会社によって基準が異なっており、明示的に基準は公開されていません。但し、各保険会社の傾向はありますので気になる方は交通事故に詳しい弁護士にお問合せされることをおすすめします。
また、各保険会社が提供している人身傷害補償特約の約款は公開されているので参考になります。
(外部リンク)あいおいニッセイ同和損害保険
交通事故被害者の法律相談は0円!完全無料です。弁護士直通の無料相談や電話会議システムを利用したWEB面談も実施。法律相談は24時間365日受け付けておりますので、今すぐお問合せください。
4. 後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級×3つの算定基準で定まるため以下の通り表にしてまとめることができます。なお、任意保険基準は各保険会社ごとに異なりますが、概ね自賠責基準と同じか少し上回るぐらいと考えて良いでしょう。
4.-(1) 後遺障害慰謝料の早見表
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
第1級 | 1100万円 | 約3000万円 |
第2級 | 958万円 | 約2400万円 |
第3級 | 829万円 | 約2000万円 |
第4級 | 712万円 | 約1700万円 |
第5級 | 599万円 | 約1400万円 |
第6級 | 498万円 | 約1200万円 |
第7級 | 409万円 | 約1000万円 |
第8級 | 324万円 | 約850万円 |
第9級 | 245万円 | 約700万円 |
第10級 | 187万円 | 約550万円 |
第11級 | 135万円 | 約420万円 |
第12級 | 93万円 | 約300万円 |
第13級 | 57万円 | 約180万円 |
第14級 | 32万円 | 約110万円 |
4.-(2) 具体例:むちうちの後遺障害慰藉料
例えば、交通事故にあってむちうち症(診断名:頚椎捻挫など)と判断されたときは、治療が終了した段階でも痛みが残っていれば後遺障害等級14級が問題となります。
- 後遺障害等級が認定されなかった場合:なし
むちうち症は他覚症状がないため後遺障害等級が認定されないこともあります。もし、後遺障害等級が認定されなかったときは後遺障害慰謝料・逸失利益は貰えません。
- 後遺障害等級14級×自賠責基準:75万円
後遺障害等級14級が認定されたとしても、上記の通り自賠責基準だと後遺障害慰謝料は32万円しか認められません。また、逸失利益としては43万円が支給されることが多いです。
- 後遺障害等級14級×弁護士基準:約220万円
交通事故に強い弁護士に依頼することで、後遺障害等級14級を得た上で保険会社と示談交渉をすれば弁護士基準(裁判基準)に基づく請求ができます。
弁護士基準(裁判基準)だと、後遺障害慰謝料110万円に加えて、逸失利益約108万円(年収500万円の場合)を獲得することができます。
4.-(3) 後遺障害慰謝料は弁護士基準で大幅に増額
以上のように、もし後遺障害等級の認定が受けられなかったときは後遺障害慰謝料・逸失利益は貰えません。
交通事故に強い弁護士に依頼することで後遺障害等級の認定を受け、弁護士基準(裁判基準)で交渉することで後遺障害慰謝料・逸失利益を大幅に増額することが可能となります。
適切な後遺障害慰謝料を獲得するためには弁護士に依頼して慰謝料の増額交渉をすることがポイントとなります。まずは、あなたの事案について、弁護士基準で慰謝料の増額ができるか相談することをおすすめします。交通事故被害者は無料で法律相談を受けることができ、適正な損害賠償金額等について無料で診断して貰えます。
5. まとめ
本記事では後遺障害慰謝料について、後遺障害慰謝料の相場や計算方法、後遺障害慰謝料と区別されるその他損害項目を解説しました。
後遺障害慰謝料は、交通事故の被害にあったときに請求する損害項目の中でも高額になる傾向があるため非常に重要です。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級×算定基準によって明確に計算方法が定められています。適切な後遺障害等級の認定を受けることがまず重要になってきますので、症状固定直後に交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。