交通事故により、心身にいろいろな後遺症が残る場合があります。適正な保険金を受け取るためには、「後遺障害等級認定」を受けることが必要です。
ここでは、後遺障害等級認定とは何かという基礎的な知識をまず説明し、次に後遺障害等級認定の仕組みと流れを解説していきます。
また、後遺障害等級認定を受けるために交通事故の被害者がどのような手続きをする必要があるかも紹介します。
後遺障害等級が認定になるときは弁護士によって大きく損害賠償金額が変わる可能性があります。早めに交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
1. 交通事故の被害で重要な後遺障害等級
1.-(1) 後遺障害の種類:16等級142項目の後遺障害等級
交通事故が原因で視力を失ったり、歩行が困難になったり、物忘れを発症したりするなど、さまざまな後遺障害があります。個々のケースによって後遺障害の種類や程度はさまざまなので、公平性を確保するためにはなんらかのルールが必要です。
後遺障害等級とは、そのために定められている基準です。後遺障害等級では、後遺障害を16等級142項目に分類しています。これによって、同程度の後遺障害であれば等しく賠償が受けられるよう公平性を確保するとともに、保険金が被害者に支払われるまでの期間を短縮しています。
1.-(2) 後遺症と後遺障害等級の違い
ここで「後遺障害」という言葉について説明しておきます。後遺障害とは、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責」といいます。)に関係して使われている用語です。
この用語は、精神的・肉体的な症状が「将来に渡って回復不能であることが医学的に証明されていること」「交通事故との因果関係が認められること」「労働能力の低下・喪失を伴うこと」などの条件を満たした場合に使われます。
これに対して、後遺症はもっと広範囲です。そのため、後遺障害等級では分類不能な症状や、認定されない後遺症もあるでしょう。
常識の範囲では同じような意味で捉えても問題ありませんが、交通事故の損害賠償の請求においては重要な違いがあることを認識しておく必要があります。
そして、この後遺障害があると認められることが、後遺障害等級認定の「認定」の意味です。後遺障害等級は法律用語です。従って、後遺障害等級についての判断は弁護士にご相談ください。
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2. 後遺障害等級認定は誰が行っているのか?
2.-(1) 自賠責調査事務所による後遺障害等級認定
交通事故の被害者に後遺障害がある場合、後遺障害を認定してもらうことは経済的にも精神的にもとても重要なことです。
後遺障害等級の認定について知っておきたいのは、誰が認定するかということです。結論からいえば、後遺障害等級にもとづいて最終的に後遺障害を認定しているのは、自賠責から調査依頼を受けた自賠責調査事務所(損害保険料率算出機構)です。
2.-(2) 後遺障害等級認定のための必要書類提出
しかし、最終的には自賠責調査事務所が認定するとしても、被害者側からみると、まず医学的に後遺障害を認定してもらう必要があります。つまり「後遺障害診断書」を医療機関から受け取り、保険会社に提出しなければなりません。
必要ならば、レントゲンやMRIの画像も提出します。このように、まず医療機関から後遺障害であると診断される必要があるため、できるかぎり正確に全ての症状を医者に報告する必要があるといえるでしょう。
とくに交通事故の被害にあってむちうち症状になったときは、他覚症状がないむちうち症は自分で症状をきちんと伝えることが重要です。
3. 後遺障害等級認定の仕組みと流れ
ここでは、交通事故の被害者が具体的にどのような認定の仕組みで後遺障害等級認定を受けるのか、認定の流れに沿って説明します。
3.-(1) 症状固定後に認定を行う
交通事故の被害にあったとき、まずは交通事故によるけがや症状を治療することになります。けがや症状がこれ以上治療を行っても回復しない状態(症状固定)になって初めて後遺障害が問題になります。従って、後遺障害等級の認定を行うのは症状固定まで待たなければなりません。
後遺障害は「将来に渡って回復不能である」という前提があります。そのため、交通事故直後から加害者に請求できるけがや症状の治療費とは異なるという認識をしておきましょう。
もっとも、実際にはけがや症状の治療をしていくなかで「いつぐらいまで治療を続けるのか」「術後のリハビリ期間」などを相談しながら症状固定の時期を決めていくケースが多いといえます。
3.-(2) 後遺障害診断書の作成
症状が固定したら、次に後遺障害診断書を作成してもらいます。後遺障害認定で最も重要なのは、この後遺障害診断書です。
後遺障害等級認定においては審査を書類のみで行うという「書面主義」をとっているため、後遺障害診断書の文言によって、等級が認められたり認められなかったりします。
医学的な知識が必要とされるなど、一般の人にとって難解な部分もあるでしょうが、できるかぎり詳細に後遺障害診断書をチェックすることが大切なのです。
被害者が医者に「このように書いてほしい」と依頼することは困難です。記述がない症状や程度について意見を言ったり相談したりすることはかまいませんが、必要以上に医者に自分の要求を通そうとするのはやめましょう。
もっとも、後遺障害診断書を書くことにより、交通事故の当事者同士の争いに巻き込まれることを嫌って後遺障害診断書を曖昧に記載する医者もいるようです。後遺障害診断書の作成にあまりにも消極的であるなど、不信感を抱いた場合は、交通事故の後遺障害等級認定に詳しい医者を探すことを検討してもよいでしょう。
重大な後遺障害がある場合には今後の人生がかかっているので、納得できる後遺障害診断書をもらうことが重要です。
交通事故の被害にあったとき、後遺障害診断書以外にも、治療方針が合わない又はむちうち治療に積極的でないなどとして医者に不満を覚える方も少なくありません。もし治療が開始直後などは転院も含めて検討することもあり得るでしょう。
交通事故の治療中から後遺障害等級認定等を見すえて対応すると、交通事故の示談では有利になります。もし、医者の対応に不満があれば、どのように対応するべきか弁護士にご相談ください。
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3.-(3) 事前認定と被害者請求:後遺障害等級の認定申請
後遺障害診断書を医療機関から受け取ったら、後遺障害等級の申請手続に入ります。後遺障害申請手続の方法は2つです。
加害者の任意保険会社に対し後遺障害診断書を提出する場合(事前認定)と、被害者請求をする場合です。
3.-(4) 事前認定の注意点
加害者の任意保険会社に後遺障害診断書を提出する場合には、基本的にここまでで被害者の作業は完了です。任意保険会社が、後遺障害申請手続を自賠責に回し、自賠責から後遺障害の症状や程度が調査されます。
最終的に、自賠責調査事務所が調査・判断し、後遺障害に該当すると判断された場合には後遺障害等級が決められ、自賠責から被害者に通知されます。
しかし、一般的には保険会社に後遺障害等級の認定申請を任せる事前手続は交通事故の被害者にとって不利だと言われています。後遺障害等級認定の公平性にも限界があり、判断が微妙な事案では正しい後遺障害等級が認定されないことがしばしば発生するからです。
保険会社にとっては保険金が少ないほうがよいため、少なくとも後遺障害等級が被害者にとって有利になるよう積極的に働きかけることはしません。保険会社が自賠責調査事務所に渡す書類が不十分であるとか、不備があるケースもあるようなので注意しましょう。
3.-(5) 被害者請求をする場合の手続き
一方、被害者請求をする場合は、被害者の手続きは複雑になります。まず、自賠責に連絡をして保険金請求用の書類を一式送ってもらいます。
詳細は省きますが、後遺障害診断書だけでなく、診療報酬明細書、レントゲンやMRIなど検査結果の資料が必要です。
また、交通事故証明書を交通事故安全センターから取得する必要がありますし、事故発生状況報告書も自分で作成しなければなりません。これらの書類をもとに自賠責経由で自賠責調査事務所が調査を完了すると、自賠責から被害者に結果が通知されます。
(参考)交通事故証明書とは。取得方法やチェックポイントを解説!
もっとも、被害者請求は様々な書類を集めなければならず、またどのような観点から書類を作成するべきかについても考える必要があります。なお、上記で挙げた他にも交通事故被害の損害賠償を請求するためには通院交通費証明書や休業損害証明書も収集する必要があります。
働き盛りの会社員は被害者請求の手続きを自分で行うことは難しい場合も少なくありません。このような場合は弁護士に依頼して被害者請求の手続きを弁護士に任せることもご検討ください。
交通事故の被害者は、弁護士に依頼しても費用負担がないか又は弁護士費用を上回る慰謝料増額により損をしないケースがほとんどです。詳しくは無料相談で弁護士にお問合せください。
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4. 事前認定と被害者請求はどちらがいいのか?
加害者の任意保険会社に後遺障害診断書に送るだけで済む事前認定のメリットは、手続きが簡単なことです。その反面、審査が不透明であること、自分の主張が十分にできないなどがデメリットといえます。
審査が不透明というのは、保険会社が被害者のために最大限有利な書面を提出するとは限らず、書類が不十分であるために保険会社に有利な判定が行われていてもわからないなどです。
これに対し、被害者請求の場合は、自分で審査のための書類を作成しているので、透明性が保たれ、自分の主張をしやすいのがメリットです。
被害者が積極的に後遺障害を立証することで認定を受けやすくなるケースもあります。また、被害者請求の場合、認定を受けられたら、ただちに保険金が受け取れるメリットもあります。
一般的には、加害者の任意保険会社に後遺障害診断書に送る事前認定手続がよいのは、交通事故の状況や因果関係が明確である場合や、後遺障害が比較的軽いケースです。
一方、交通事故の状況や因果関係があいまいで、望んでいる後遺障害が認められないことが予想される場合や、後遺障害が重度の場合には、被害者請求をしたほうがよい場合もあります。
書類作成が大変な場合には、弁護士を立てて行うケースもあります。後遺障害が重度の場合は保険金も高額になります。適切な等級を認定される可能性が高まることもあるので、弁護士に依頼することを検討する価値があるでしょう。
5. まとめ:交通事故の状況と後遺症の程度を踏まえて後遺障害等級の認定申請を行う
交通事故の被害者となり、後遺障害がある場合には補償を受け取ることができます。補償の金額は後遺障害等級によって決まるため、納得のいく金額が受け取れるかは後遺障害等級の認定にかかっています。
適切に認定を受けるには、加害者の任意保険会社に後遺障害診断書を送る事前認定の方法だけでなく、被害者請求をする手段もあります。交通事故の状況と後遺症の程度によって方法を選びましょう。