交通事故の示談交渉や裁判では、過失割合について被害者であるあなたと加害者側の保険会社とで主張に相違のあるケースがよくあります。
そのときに参考にされるのが過去の判例です。判例を知っておくと自分が主張するときや相手の主張に反論するときに役立ちます。
この記事では過失割合と判例について、判例とは何かや説明し調べ方や注意点について解説します。
1. 過失割合の判例とは何か
1.-(1) 過失割合の判例について
過失割合の判例とは交通事故について被害者と加害者の過失割合について裁判所が過去に示した判断のことです。
交通事故の示談交渉では、被害者と加害者の間で過失割合について折り合いがつかず、裁判に発展してしまうことがあります。
法廷で争った結果、裁判所が下した判決の内容が過失割合の判例となります。
1.-(2) 判例と裁判例の違い
なお、厳密には最高裁判所の判断のみを「判例」と呼び、下級裁判所の判断は「裁判例」と呼ぶ場合もあります。ここでは特に区別せずに両者を判例と呼びます。
一般的に、下級裁判所では最高裁判所の判例に沿った判決を下すことになります。同じような訴訟が起ったときに、裁判所や裁判官ごとに独自の見解で異なる判断をしていては平等とはいえないからです。つまり、法律の原則となる公平性を維持するために、最高裁判所の判例は以降の裁判所の判断に対して大きな影響力を持ちます。
判例と裁判例という呼称で区別しているのは、同内容の判決であっても最高裁判所と下級裁判所とではこのような差があるためです。
1.-(3) 過失割合は下級裁判所の判例も重要
しかし、過失割合に関しては専ら下級裁判所の判断が重要となります。
過失割合は交通事故の類型や状況に応じて様々なケースに関する裁判所の判断が積み重なって決められます。
必ずしも最高裁の判例になるようなケースだけでなく、むしろ下級裁判所の膨大な裁判例の積み重ねが過失割合を決定する場面では重要なのです。
2. 判例を知っておくメリットと利用できる場面
2.-(1) 加害者の保険会社との交渉結果を予測できる
過失割合の判例が重要になるのは、あなたが交通事故の被害にあった状況と類似の判例を見れば裁判になった場合に自分と加害者にどのような判決が下されるのかを予測できるからです。
つまり、過失割合の示談交渉や裁判では判例にもとづいた要求をすると言い分が通りやすくなるということです。
加害者と被害者の責任の度合いの決め方については法律上計算式が存在するわけではありません。
過失割合は両者が合意すればどのようでも構いませんが、適切妥当な結論をすり合わせるために参考になるのが過去の判例です。
2.-(2) 過失割合の判例を知っていれば言いなりになって示談することを防げる
もちろん類似の交通事故であっても、いろいろな面で詳細は異なります。そこで、できるだけ似ている判例の過失割合を根拠にすることで、少なくとも大きく損をすることは避けられます。
また、加害者の保険会社があなたの過失割合を不当に高く主張していたときに気付けることもメリットです。すなわち、判例を知ることは、過失割合の示談交渉や裁判において自分を守るということに他なりません。
交通事故被害者の法律相談は0円!完全無料です。弁護士直通の無料相談や電話会議システムを利用したWEB面談も実施。法律相談は24時間365日受け付けておりますので、今すぐお問合せください。
2.-(3) 過失割合以外に判例を読めば分かること
また、判例で分かることは過失割合だけではありません。
例えば、休業損害、逸失利益や慰謝料等の交通事故で問題になる点も実は判例が基準となって決められています。
類似の交通事故に関する判例を調査すれば、損額賠償額や慰謝料の相場を知ることも可能です。その他にも、後遺障害の認定を受けられるかどうかの参考になる判例などもあります。
3. 過失割合の方法を調べる2つの方法
適正な過失割合を知りたいと思って判例の調べる方法は大きく2つに分かれます。
3.-(1) 過失割合の判例の調べ方①:法律関係の書籍で網羅的に調べる
過失割合の判例を調べる1つ目の方法は、法律関係の書籍をチェックすることです。
後述する通りインターネットで過失割合の判例を調べる方法もあります。便利なインターネットではなく、なぜ書籍を進めるのか不思議に思われるかもしれません。
しかし、交通事故の過失割合については過去の判例をデータベースとして整理をした判例タイムズ社出版の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38号)を参考にすれば足りることも多いです。
インターネットで過失割合の判例を調べることはできますが体系的に整理がされていません。判例タイムズの書籍であれば綺麗な表とともに、過失割合の判例が説明されているのでおすすめです。
交通事故について解説をした書籍は一般的な書店では売られていないことも多いですが、多くの場合は出版社のホームページから注文が可能です。
読んでみるまで自分と似たケースの判例があるのかわからないため、取り扱っている図書館で先に中身を確認しておくと安心です。
3.-(2) 過失割合の判例の調べ方②:インターネットで深掘りする
次に、インターネットを用いて検索する方法です。情報化の進んだ現代社会では、インターネット上に裁判の情報がたくさん存在しています。
例えば、「過失割合 判例」などで検索をすれば、判例に基づいて過失割合を説明している記事が多数出てくると思います。
過失割合の判例について書籍を読んでも分からなければインターネットで深掘りをする調べ方をおすすめします。
しかし、参考になりそうな記事を見つけても、自分の求める詳細まで記載されているとは限りません。
もっと知りたいと感じたら、記事に掲載されている裁判の年月日をチェックし、それをもとにして裁判所のホームページを利用するのが得策です。
裁判所のホームページでは、過去に行われた裁判の判決が公開されています。
データベースを検索するシステムも用意されているので有効活用しましょう。会員登録をする必要がなく、アクセスできれば誰でも無料で使用できます。
もっとも、裁判所のホームページに掲載さいれている判例のデータベースは交通事故に限定されておらず、収録されている判例も多くはありません。
そこで、弁護士事務所や法律事務所は豊富な判例が掲載されている有料のデータベースを使用しています。
4. 過失割合の判例を調べるときの注意点
4.-(1) 保険会社が提示してきた過失割合の判例について
まず過失割合について保険会社から判例を提示されたので調べたいケースの注意です。
保険会社が過去の判例と照らして過失割合について提案をするケースがあります。しかし、保険会社は多数の交通事故を扱っており、また裁判や法律の知識があるわけではありません。
従って、実情としては保険会社の担当者が似た事例と思った判例を事務的・機械的に当てはめているにすぎません。
しかし、裁判所や弁護士の目から見ると適切な判例でないケースも少なくありません。保険会社が過失割合の根拠として提示する判例は保険会社に都合の良いものと割り引いてみておくこと注意が必要です。
4.-(2) 適切な過失割合の判例を見つけたと思ったときの注意点
また、自分の事故について適正な過失割合を知りたいと思って判例を調べるケースもあるかもしれません。
しかし、過失割合の判例を探すときは注意が必要です。弁護士事務所のホームページでも分かりやすく説明するために詳細を省いていたり、選んだ判例に執筆者の主観が入っているからです。
もし、あなたの事故と似た判例を見つけたと思って、判例の全文を読むと全く前提が違うというケースもあります。
従って、判例が絶対的な根拠であるかのように過信するのは避ける必要があります。
もっとも、過失割合の判例を知っておくと役に立つことも多いです。たとえば、加害者の保険会社が過失割合について根拠がないことを言ったときに丸めこまれていると気付くことができるでしょう。
4.-(3) 早めに交通事故に強い弁護士に過失割合の判例を相談する
信ぴょう性と説得力を兼ね備えた根拠が欲しいなら、やはり適切な判例を見つけるのが一番です。しかし、インターネットや書籍を使っても、なかなか探しだせないことも少なくありません。
そんなときは、交通事故に強い弁護士への相談も視野に入れると良いでしょう。弁護士はいろいろな判例を知っていますし、一般の人が利用できないような専用の検索システムの契約をしていることも多いです。
法律相談では、相談者が時間をかけて調べた判例が専門家の目から見ると全く交通事故の状況が違うというケースも少なくありません。
自分で頑張って調べて不適切な判例しか見つからなくても、交通事故に強い弁護士に聞けば5分で適切な判例が見つかることもあります。
また、交通事故に強い弁護士であれば、難解な判例の内容を分かりやすく説明し、その判例とあなたの交通事故状況がどういう点で同じなのかも解説してくれるでしょう。
過失割合の判例を自分で探して読み解く場合と比べて、ずっと時間を短縮できますし、間違った認識を持つことも防げます。
もし過失割合の判例を調べても分からないことがあれば、素直に弁護士に相談することをおすすめします。
5. 過失割合の判例を調べるメリットや方法を踏まえて対応しよう
一般的に、交通事故のあとは精神的にもショックを受けて疲弊しています。そのような状態で、加害者と示談交渉や裁判を行うのであれば、自分を支えるためにも主張に対する強い根拠を持っておきたいところです。
過失割合の判例はその役割を果たすものなので、意味やメリットを理解するのと同時に、調べる方法もしっかりとチェックしておきましょう。