交通事故が起こったとき過失割合の影響で損害賠償金は左右されます。
交通事故の被害にあったときに保険会社から過失割合を理由に示談金の減額を求められるかもしれません。過失割合の決め方や仕組みを知っておかないと納得できない金額で泣き寝入りする羽目になるでしょう。
また、過失割合は事故の状況ごとにも基準が変わります。この記事では、事故の被害者が知っておくべき過失割合の計算方法や過失割合の具体例について解説します。
この記事を読んで詳しく過失割合を知りたいと思ったら、弁護士に無料相談ください。交通事故被害者からの法律相談は無料でお受けしていますので、あまり悩まずお気軽にお問合せください。
1. 過失割合とは?交通事故は基本的に加害者が被害者に賠償を行う
交通事故が起きたとき、被害者は加害者に対して交通事故の被害による損害賠償を請求できます。
しかし、交通事故の原因について被害者にも責任があるときは、加害者が損害額のすべてを支払うのは公平といえません。
事故の状況、被害者の行動などによっては、交通事故が加害者だけの責任と言い切れない場合もあります。
1.-(1) 過失割合とは
過失割合とは、交通事故の責任を数値化したものです。たとえば、加害者と被害者で過失割合が「7:0」だとすれば、加害者に責任の7割があることを意味します。
過失割合が仮に7:0と判断されれば、加害者は被害者が被った損害額のうち7割を賠償すれば良いことになります。
従って、交通事故の被害者にとっては過失割合が10:0であると主張したいところです。しかし、交通事故で片方だけに責任があると考えられるのはむしろ例外であり、ほとんどケースでは双方に責任があるとされます。
そのため、加害者の保険会社は過失割合が10:0ではないことを前提に、少しでも被害者に落ち度があったと主張してきます。
被害者なのに交通事故の責任があったと言われると気分が悪いですよね。少しでも有利な過失割合を勝ち取りたいところです。
1.-(2) 過失割合は誰が計算して決めるか?
過失割合の計算方法を説明する前に誰が過失割合を決めるかに言及しておきます。
まず、警察は過失割合を決めることはできません。警察は交通事故直後に「この事故は過失割合10:0だね」と発言することはありますが、信用してはいけません。
過失割合は民事上の問題であり、刑事事件や行政処分の観点で交通事故を扱う警察は過失割合のことを何も知っていません。
過失割合はまずは当事者間で交渉をして決定する流れとなります。
ただし、本当に当事者同士が交渉を始めてしまうと、お互いの主張がぶつかり合って平行線を辿りがちです。また、交通事故の加害者が支払う損害賠償金を負担するのは保険会社です。
従って、現実には加害者の保険会社と交渉を行うことになります。保険会社は支払う損害賠償金を減らすことが仕事ですから、あなたに不利な過失割合を提示してくるはずです。
もし交渉で過失割合を決定できなければ最終的に裁判で決着をつけることになります。
過失割合については数多くの裁判例があるため、裁判所が過去の事例を参考にしながら過失割合を決定するのです。
過失割合は警察や保険会社が決定するのでなく、裁判所が決めることは重要なポイントなので押さえておきましょう。
2. 過失割合と損害賠償の計算方法は?当事者も自力で算出できるのか
2.-(1) 過失割合の計算方法には算定基準がある
被害者が加害者に請求できる損害賠償額は過失割合を使って計算されます。損害賠償額の計算方法では、交通事故被害者であるあなたの過失割合が低いほど、損害賠償金額が大きくなります。
そのため、交通事故の被害にあったときは、いかに自分の過失割合を小さくできるかが交渉のポイントです。
ここでは加害者の保険会社から提示された過失割合に納得できないときのために過失割合の計算方法を説明します。
過失割合を自分で予測しておくと、交渉結果が正当な内容かどうか見極めやすくなるからです。
過失割合は原則として過去の裁判例を基にして決定されます。最終的に裁判所の判断で過失割合が決まると説明しますが、既に様々な交通事故の状況での過失割合について裁判所が決定しています。
従って、過失割合は過去に蓄積された膨大な裁判例を参考にして計算することになります。
さらに実務上は、この裁判例をベースとしてまとめられた算定基準があります。
もっともメージャーなものが、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38号)です。
こちらは裁判所でも参考にされており、過失割合について裁判所の公式な算定基準だと考えても良いぐらいです。
こちらの書籍は誰でも購入することが可能です。従って、過失割合の計算方法は誰でも知ることができます。
しかし、過失割合の算定基準には様々なパターンがあり、さらに修正要素があります。
従って、あなたの交通事故がどのパターンに当てはまるかや、修正要素が適用されるかを巡って争いが生じます。この点が交通事故に強い弁護士の腕の見せ所だと言えます。
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2.-(2) 過失割合と過失相殺の考え方
仮にあなたの事故について過失割合が「8:2」とされたとします。この場合、次に問題になるのが過失相殺です。
過失相殺とは被害者の過失割合に応じて損害賠償額が減額される制度です(民法722条2項)。つまり、過失相殺の効果は損害賠償額が減額がされることです。
交通事故の損害賠償請求は、損害の公平な分担を趣旨としているため、被害者側にも交通事故の原因がある場合はその度合いに応じて損害賠償額を負担させるというのが過失相殺の考え方です。
2.-(3) 過失割合による損害賠償額の計算方法
仮に過失割合が「8:2」だとすると、どのように過失相殺が行われて損害賠償額が計算されるのか具体例で示してみます。
例えば、交通事故の被害に遭って、あなたが怪我を負い、加害者の車も壊れたとします。あなたの損害額が物損や慰謝料を合わせて100万円で、加害者の車について修理費用50万円がかかったとします。
このとき加害者と言えども20%は損害賠償ができるため50万円×20%=10万円を請求できます。これに対し、あなたは過失割合8:2であるため損害額100万円のうち80%である100万円×80%=80万円を請求できます。
従って、あなたは加害者の保険会社に対して80万円を請求し、加害者に修理費のうち10万円を支払うことになり、差し引き70万円を得ることになります。
これに対し、仮に過失割合が「7:3」とされると同様の計算方法により、加害者への請求が70万円、加害者への支払いが15万円となるため差し引き55万円しか得られません。
過失割合が10%変わるだけでも結論に大きな影響があるため注意が必要です。
3. 過失割合の具体例:過失割合が問題になりやすい3つのケース
ここからは具体例をベースとして、どのような交通事故状況だとどの程度の過失割合とされるかを説明していきます。
3.-(1) 過失割合の具体例①:交差点の事故は信号によって決まる
交差点は交通事故が最も起こりやすいポイントと言われています。
実務的にも、信号無視や右折車との衝突など、様々な原因による交差点での交通事故のご相談があります。そして、交差点での交通事故は過失割合が争われるポイントでもあります。
交差点の事故における過失割合は発生時の信号によって大きく変わります。
あなたが交差点を直進していたところ、同じく横から直進してきた加害者と衝突事故が起こったとします。
あなたが青信号で普通に走行していたにもかかわらず、加害者が赤信号を無視して突っ込んできた場合には過失割合が明らかです。被害者にまったく責任があるとはいえないため原則として「加害者10:被害者0」となります。
これに対し、加害者が黄色信号で突っ込んできた場合には、やや事情が異なります。「加害者8:被害者2」のように、あなたの損害賠償額も過失割合による減額を受けま。
これに対し、信号がない交差点では「道路の幅」や「減速をしたかどうか」などの要因で過失割合が決められます。
例えば、あなたが信号のない交差点に減速して侵入したところ、右から走ってきた加害者が原則せずに衝突してきたとします。この場合の過失割合は「8:2」となります。
またあなたも加害者も原則していなくても、信号のない交差点の交通事故であなたが道幅の広い道路を走っており、加害者が道幅の狭い道路を走っていたときの過失割合は「7:3」となります。
このように交差点の交通事故では様々なパターンに基づいて過失割合が決められます。
3.-(2) 過失割合の具体例②:駐車場周辺の事故における過失割合
駐車場は狭いスペースで複数の車が走行していることもあり、交通事故が多い場所です。また、駐車場に出入りするときも自動車同士の接触事故が起こりえます。駐車場周辺の過失割合はどのように判断されるのでしょうか?
まず、あなたが駐車場内を走行していたところ、加害者が駐車場内の駐車スペースから出ようとして衝突してきたときの過失割合は「7:3」となります。
駐車場内は双方が交通事故に気をつける必要がありますが、駐車スペースから出ようとした加害者の方が前後左右の確認義務がより強く発生するからです。
次に、あなたが道路を走っていたところ、駐車場から出てきた加害者の自動車と衝突したケースです。駐車場から出ようとして加害者は道路外出入車と呼ばれます。
直進車である被害者のあなたと駐車場から出てきた加害者の交通事故では過失割合は「8:2」となります。
道路外出入車が急に飛び出してきた場合、道路を走行している車両は急に対応が難しいです。また、敷地内から一般道路に出て行く際、通行者の妨害をしてはいけないと道路交通法によって決められてもいます。
さらに、あなたが道路を走っていたところ、対向車が駐車場に入ろうとした加害者が右折をしてきて衝突したとします。この場合の過失割合は「9:2」となります。
一般道路は直進車が優先の原則があり、右折車は本来、直進車が来ていないことを確認してから曲がらなければいけないからです。
3.-(3) 過失割合の具体例3:修正要素によって割合が減算されることも
加害者の保険会社から過失割合が伝えられたとき、予想よりも被害者の割合が大きい場合もあります。
もし保険会社が提示した過失割合に納得できないときは修正要素を主張して過失割合を減らすことが考えられます。
修正要素とは、基本的な過失割合に加えて考えるべきポイントのことです。加害者が自分に都合のいい証言をしていたり、保険会社の調査が不徹底だったりすると、修正要素は見逃されがちです。
とくに交通事故に強い弁護士に相談をすることで、過失割合の修正要素が見つかることがあります。加害者側の保険会社も弁護士を通じて交渉をすれば、過失割合の修正に応じるケースもあります。
例えば、過失割合の修正要素として「著しい過失」と「重過失」があります。も見逃せません。
重過失とは交通事故が起きたのがざざとと言われてもおかしくない程度の過ちです。睡眠薬を飲んだ状態で運転していたり、30キロ以上のスピード違反を犯したりしていたときなどに重過失は適用されます。
重過失を犯した加害者は過失割合が加算されるため、加害者が申告をしない又は嘘をつくケースがあります。
交通事故はどの程度のスピードが出ていたか、運転に問題がなかったが争われます。しかし、交通事故は突発的なものであり書面で明確な証拠がないため争われることになります。
このような場合は交通事故に強い弁護士に相談して、加害者の過失割合の加算要素を主張することが考えられます。
交通事故に強い弁護士の腕の見せ所とも言えますので、交通事故の被害にあったときは有利な過失割合を実現できるようにしましょう。もし過失割合について納得できない、不満があるときは弁護士に無料相談することをおすすめします。
4. 過失割合は損害賠償額に大きく影響する
交通事故に遭ったにもかかわらず、獲得できた損害賠償の金額が少ないと後々の生活に関わってきます。しかも、不当な過失割合が適用されているのに被害者本人が気づいていないケースも珍しくありません。
交通事故の被害にあったときは交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。弁護士費用特約があり弁護士に依頼しても負担がないことや、弁護士に依頼すれば交通事故の慰謝料増額が期待できることが非常に多いです。
(参考)弁護士費用特約とは何か? 活用例やよくある質問を解説!
過失割合・過失相殺と損害賠償についてきちんと法律知識を身につけ、損をしないように注意しましょう。もし保険会社の提示した過失割合がおかしいと感じたときは、弁護士に法律相談をすることをおすすめします。