交通事故が起きたとき、過失割合に応じて加害者から被害者に損害賠償が支払われます。
過失割合にはある程度の基準が定められているものの、事故の状況によっては修正要素が加わります。
過失割合の修正要素としては「幹線道路」「大型車」「子どもと高齢者」「合図なし」「著しい過失と重過失」などが具体例として挙げられます。
この記事では、交通事故の被害者が知っておくべき修正要素について詳しく解説していきます。
1. 過失割合の修正要素とは
過失割合の修正要素とは、交通事故の類型毎に定められた過失割合の基本料率について、交通事故の具体的状況に応じて減算・加算をすることです。
1.-(1) 過失割合の修正要素の考え方と具体例
実務上、過失割合は判例タイムズ社出版の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38号)というデータベースを参照して定められます。
このデータベースは過去の裁判例を分析して、交通事故の類型毎に過失割合を定めています。例えば、自動車同士が交差点で事故を起こした時に直進車同士であれば、赤信号だった加害者と黄色信号だった被害者の過失割合は「8:2」という形です。
しかし、これはあくまで交通事故の類型による過失割合の基本料率を定めたものです。
例えば、片方が大幅にスピード超過をしていた場合には、基本料率では過失割合として適正とは言えません。
従って、交通事故の具体的状況によって過失割合の修正があり得ます。これが過失割合の修正要素と呼ばれるものです。
1.-(2) 過失割合の基本割合と修正要素がどうやって決まる?
判例タイムズ社のデータベースには、さまざまな条件でどのような過失割合が適応されてきたかが記録されています。
その条件は非常に細かく設定されているので、当該データベースを調べればとりあえずの基本的な過失割合は見えてくるでしょう。
過失割合が具体的にどうやって決まるかですが、まずは加害者の保険会社から過失割合を提示されることが多いでしょう。
交通事故において、加害者が一方的に悪くて被害者にまったく責任がないという状況は極めて稀です。そのため、交通事故が報告された時点で、加害者の保険会社による過失割合の調査が始まります。
しかし、加害者の保険会社はあくまで加害者の立場であり、被害者の過失割合を増やして示談金を減らす動機があります。
従って、保険会社から過失割合の基本料率と修正要素を提示されたときに納得できない場合があるかもしれません。
このような場合は交通事故に強い弁護士に依頼をして再度交渉をすることで、適切な過失割合で示談できるかもしれません。
他方で、どうしても保険会社が提示する過失割合に納得できなければ、最終的には裁判所の判断で過失割合が決められます。どの程度の過失割合が認められるかは、弁護士の無料相談でお聞きください。
1.-(3) 過失割合の加算要素と減算要素とは
過失割合の修正要素には加算要素と減算要素があります。
例えば、加害者に明らかな落ち度があった場合など、特別な条件が加われば過失割合が増えます。これを過失割合の加算要素と言います。
他方で、交通事故の被害者が幼児や老人であれば、被害者の落ち度を強く責めることはできません。そこで、幼児や老人が交通事故にあったときは過失割合を減らすこととされています。これを過失割合の減算要素と言います。
2. 過失割合の修正要素 具体例5つのパターン
過失割合の修正要素はさまざまな項目から成り立っています。修正要素ごとに細かい条件が設定されているため、交通事故の被害にあったときは交渉で損をしないようチェックしておきましょう。
2.-(1) 修正要素の具体例①:幹線道路について歩行者の過失割合加算
よく用いられる修正要素としてはまず「幹線道路」が挙げられます。
幹線道路とは車道が幅広い県道や国道のように多数の車が走行している道路です。例えば、歩行者や自転車と自動車の交通事故の場合、歩行者や自転車は幹線道路を通るときはより一層注意するべきと考えられます。
従って、歩行者や自転車の過失割合が5%程度を加算させる修正要素とされています。
2.-(2) 修正要素の具体例②:大型車の過失割合加算
大型車が絡んだ交通事故のときは大型車であることは過失割合を加算する修正要素です。
重量が11000キロであったり、30人以上が乗車可能だったりする車両は法的に大型車とみなされます。大型車が起こす事故は被害が甚大になりやすいため、走行には特に注意が必要です。
すべての事故で修正要素が適用されているわけではないものの、明らかに大型車であることが事故の原因となった場合には、損害賠償が加算されます。
たとえば、大型車であるにもかかわらず手荒な運転でカーブを曲がり、巻き込み事故を起こした場合などは修正要素に加えられるでしょう。
2.-(3) 修正要素の具体例③:子ども・高齢者の過失割合減算
児童・老人や幼児等が交通事故の被害にあったときは、子どもや高齢者であることは過失割合を減算させる修正要素となっています。
児童・幼児は交通ルールを十分に把握しているとはいえず、確認した時点で警戒しなければいけません。また、高齢者は身体能力が低下しているため、近くで乱暴な運転をするとすぐさま対処できなくなるでしょう。
このように児童・老人や幼児は、交通安全に対する理解が不十分であったり又は高齢による身体能力低下であったりするため、被害者の落ち度を問うことは不公平だと言えます。
従って、児童・老人や幼児が歩行しており、車両が危害を加えた事故では被害者側の過失割合が少なくなります。
2.-(4) 修正要素の具体例④:合図なし運転
また、交通事故の被害者と加害者はあくまで過失割合によって決まります。交通事故の状況次第では被害者と加害者の考え方にすら過失割合の修正要素が影響するときがあります。
こうしたケースの代表例としては、「合図なし運転」が挙げられます。
例えば、直進車と右折車が両方とも赤信号であるのに交差点に進入して交通事故を起こしたとします。このようなケースでは、両方ともが信号無視をしていることから過失割合は「5:5」となるのが基本です。
しかし、このようなときでも交差点で直進車と右折車がぶつかったとき、右折車がきちんと合図を出していたかどうかが争点となります。
もしも合図がなかったなら右折車に過失があったと認められるため、合図なしであることが右折車の過失割合を加算する修正要素となります。
過失割合は、事故による損害の大きさで決まるわけではなく、あくまで責任の重さで決まるため、事故当時の検証は非常に大切です。
2.-(5) 修正要素の具体例⑤:著しい過失と重過失
過失割合を決めるとき、問題になるのが「著しい過失と重過失」です。著しい過失と銃火地質の違いは交通事故では問題になりますが、一般的にはあまり出てこない概念なので注意が必要です。
著しい過失とは、交通事故の原因として想定される範囲で著しく注意義務に違反したときを指します。具体的には、「15km以上30km未満のスピード違反」「わき見運転等の著しい前方不注意」「携帯電話の使用等」などが挙げられるでしょう。これらの過失は多くの判例でも取り沙汰されており、著しい過失があるときは基本的に10%の過失割合を加算する修正要素とされます。
これに対し、重過失とは意図的とみなされても仕方のない又は故意と同じぐらい責任が重い場合の過失です。著しい過失よりもさらに責任は重く、通常の交通事故の範囲を超えた修正要素です。
例えば、「完全に酔って運転したとき」「無免許運転をしたとき」「30km以上のスピード違反」などが挙げられます。
重過失があると判断されたときは基本的に20%の過失割合を加算する修正要素とされます。
著しい過失や重過失があったかは加害者の損害賠償責任を大きく左右します。そのため過失割合を少なくするために加害者は、保険会社に有利な証言しかしていないことも珍しくありません。
加害者の証言に基づき加害者側の保険会社が過失割合を提示すると、提案された示談金額を確認してから驚くことになります。
加害者側の保険会社が提示する過失割合は決定ではないため、不満があればしっかり伝えましょう。
3. 複数の過失割合の修正要素があるときの対応
過失割合は原則として交通事故類型ごとの基本料率に対し、具体的な事故状況による修正要素を考慮して決定します。
しかし、過失割合の修正要素が複数あるときはどう対応するのでしょうか。
この点については、例えば複数の過失割合があるときも単純に足し算をして計算するようなことはありません。
過失割合の修正要素が複数あるときは総合的な交通事故状況を踏まえて、総合的に過失割合を決定していくことになります。
従って、過失割合をどの程度にするかは解釈の余地があるため、加害者側の保険会社と激しくやり取りをする必要が生じます。この点では、交通事故に強い弁護士の腕の見せ所と言えるでしょう。
複数の過失割合の修正要素があるため、あなたの事案でどの程度の過失割合を主張していくか迷ったときは交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故被害者の法律相談は0円!完全無料です。弁護士直通の無料相談や電話会議システムを利用したWEB面談も実施。法律相談は24時間365日受け付けておりますので、今すぐお問合せください。
4. 過失割合の修正要素を知って損をしないように交渉する
交通事故の過失割合は当人同士で交渉することがまずありません。
そのため、加害者側の保険会社から提示された過失割合に不満を抱く場合もあるでしょう。
また、過失割合の修正要素は交通事故の具体的状況によるため、事実関係を巡って争いが生じることもあります。
過失割合の修正要素の考え方を知って損をしないように注意しましょう。
もし、過失割合に不満があるときは弁護士に相談することをおすすめします。