自分が運転しているのではなく、家族や友人が運転している車に同乗しているときに交通事故の被害にあったときは同乗者であるあなたも損害賠償請求ができます。
友人や同僚などが運転する車に同乗していたら交通事故に巻き込まれた。そんなケースが世の中にはたくさんあります。この記事では同乗者が交通事故の被害にあったときの損害賠償請求の方法やポイントを解説します。
交通事故の被害にあった同乗者が損害賠償請求できるケース
交通事故の被害にあった同乗者は損害賠償請求ができる
結論から言うと、家族・知人の自動車に乗せて貰っていたり、バス・タクシーに乗っているときに交通事故の被害にあったとき、同乗者も何かしらの損害賠償を請求できます。
不法行為に基づく同乗者の損害賠償請求権
交通事故の被害になって死傷した同乗者が損害賠償を請求する根拠は「不法行為に基づく損害賠償請求権」(民法709条)があるからです。不法行為に基づく損害賠償請求権は、故意・過失に基づく損害を賠償するものです。
交通事故の同乗者は、交通事故を起こした当事者の故意・過失によって死傷という損害を被ったことになります。そのため、交通事故の被害について損害賠償ができるのです。
運転者と事故相手に対する請求が考えられる
同乗者にとって交通事故の加害者は運転手と事故相手の両方です。複数の加害者によって損害を被ったときは「共同不法行為」(民法719条)といいます。共同不法行為の場合は、加害者の誰に対しても損害全額を請求できます。
従って、運転手・事故相手に故意・過失があることを前提とすれば、交通事故の被害について同乗者は運転手・事故相手のいずれにも損害賠償請求ができます。
運転手・事故相手のいずれかに一切過失がないときは、過失がある方にだけ請求ができます。しかし、交通事故が起きたときは運転手・事故相手のいずれも過失があると判断されるケースが多いので、以下では両方に請求できる事例を念頭に説明します。
同乗者は誰に交通事故の損害賠償を行うべきか?
交通事故の被害について同乗者は運転手・事故相手のいずれにも損害賠償請求ができます。基本的には、運転手とは家族・友人の関係にあるため事故相手に請求がしたいと考えるのが一般的でしょう。しかし、誰に損害賠償を請求するかは以下の点を考慮する必要があります。
自動車保険が適用されるか?
交通事故の被害者にとって保険会社が損害賠償を回収できるば回収不能リスクが抑えられますし、示談交渉もスムーズに行うことができます。そのため、まずは自動車保険(対人賠償責任保険)が適用されるかは同乗者が損害賠償相手を選ぶときに重要です。
もし、事故相手が無保険であるようなケースで、運転手が自動車保険に加入しているときは、運転手の加入している保険会社に対して損害賠償請求をすることをおすすめします。
運転手が家族であるときの注意点
同乗者が交通事故被害にあうケースでは、運転手と同乗者が家族関係にあることも少なくありません。たとえば、父親の車で駅まで送ってもらった場合が該当します。
このような場合には、原則として運転手の自動車保険(対人賠償責任保険)が使えないので注意が必要です。自動車保険(対人賠償責任保険)は、交通事故の被害者が契約者の家族(配偶者、両親、子ども)である場合には免責されます。
従って、運転手が家族であるケースでは、同乗者は事故相手に損害賠償請求をする必要が高いと言えるでしょう。
人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険の利用
運転手の自動車保険(対人賠償責任保険)が使えず、事故相手も任意保険に未加入で損害賠償金の回収が難しいケースでは人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険の利用を考えます。
(参考:人身傷害補償保険で損害賠償請求をした解決事例)弁護士の交渉によりスピード解決:110万円を獲得
名称 | 内容 |
---|---|
人身傷害補償保険 | 契約中の自動車の搭乗者が死傷した場合に損害額に対する保険金が支払われる。 |
搭乗者傷害保険 | 契約中の自動車の搭乗者が死傷した場合に定額で保険金が支払われる。 |
保険契約の内容によって、どの程度の損害賠償請求ができるかは異なります。また、契約中の自動車に搭乗しているケースだけでなく、他の自動車・バス・タクシーの搭乗中の交通事故が対象となる場合もあります。詳しくは交通事故に強い弁護士にご相談ください。
運転手が家族・友人の場合の好意同乗・無償同乗について
運転手が家族・友人であるときに注意すべき点として好意同乗・無償同乗による減額があります。
好意同乗・無償同乗とは
好意同乗・無償同乗とは運転者の好意によって無償で自動車に乗せてもらうことです。たとえば、デパートに行って買い物をしたいときに友人の車に乗せてもらった場合などが該当します。
好意同乗・無償同乗による減額について
好意同乗・無償同乗のケースでは運転手が同乗を許可したのは、あくまで好意であり、しかも無償です。それなのに、一般的な交通事故と同じ扱いを受けて損害賠償を請求されるのは、妥当であると言いにくいです。
そのため、好意同乗・無償同乗のケースでは、運転手が通常通りに責任を負うのは公平ではないという考えから、一定の割合で損害賠償金の減額が適用される場合があります。具体的には20~50%程度の減額が認められることがあります。
減額が認められるケース
もっとも、好意同乗・無償同乗で減額が認められるためには何かしらの事情が必要です。たとえば、運転者が長時間の運転で疲れていることを知りながら運転を依頼した場合、スピードの超過を促したり無理な追い越しを指示したりしたようなケースでは好意同乗・無償同乗による減額が認められるでしょう。
交通事故の示談交渉において、好意同乗・無償同乗による減額が主張されるケースでは早めに弁護士に相談することをおすすめします。
(参考)交通事故示談について示談成立の流れや、知らないと損するポイントを弁護士が分かりやすく解説
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タクシーに同乗中の交通事故被害について
タクシーに同乗しているときに交通事故の被害にあったときは、示談交渉が難航する場合があるのでご注意ください。
タクシーに同乗中のケースでも、基本的にはこの記事で解説した点が妥当します。しかし、タクシー運転手に対し損害賠償請求をするときは、タクシー運転手は任意保険ではなく「タクシー共済」に加入しています。しかし、タクシー共済との示談交渉は長引くケースが多いです。
(参考)交通事故の示談交渉はなぜ長引く?理由や示談交渉の期間を短くする方法を解説
もし、タクシーに同乗中に交通事故の被害にあって、示談交渉が長引くときは弁護士にご相談することをおすすめします。
まとめ:同乗者も交通事故の被害について損害賠償請求ができる
他の人が運転している自動車に同乗中に交通事故に遭ったときは、運転手や交通事故相手に損害保険を請求することが可能です。とくに事故相手が対人賠償責任保険に加入していれば、正当な賠償の支払いが実現する可能性もあります。同乗中に交通事故の被害にあったときのポイントをまとめておきます。
- 同乗者は運転手・事故相手に損害賠償請求ができる
- 運転手が家族であるときは自動車本件(対人賠償責任保険)が原則として使えないので注意
- 人身傷害保険・搭乗者傷害保険の利用も考える
- タクシー乗車中の交通事故はタクシー共済との示談交渉が難航するときがあるので早めに弁護士に相談する
交通事故の被害にあったときは、交通事故に強い弁護士に無料相談することをおすすめします。交通事故の被害者からの相談は無料で対応している弁護士が少なくありません。また、弁護士特約が使えれば、相談料や弁護士費用は原則として負担がありません。
あまり悩まず早めに弁護士にご相談ください。